isseno・02【写真】 2014-7.04
★久しぶりに、こういったネタを書いてみたら、面白くありませんでした(笑)。オチ、ないです。
★オリジナルキャラ “ばっかり”ですので、読まれる予定の方は、ご注意ください。
★古代くんもヤマトも登場しません。
☆それでもよろしければ、ご自分の責任で、どうぞ☆
→ご感想や、中身の出来についての文句は、歓迎します♪
【写真】
「ねっ! 手に入った!? 頼んでたもの」
地味な制服に身を包みんではいるが、若さ、という華やぎを身にまとった一人が、白衣の女子に話しかける。
「……う、なんかあんまり」
「だめだったのぉっ!!」
最初のムスメは、手をこぶしに握りしめると、うるうるっとした瞳を彼女に向けた。
「--いや。ダメというわけじゃ、ない。……一応、撮れてはいるけど」
クールな声音だが、困惑している、らしい。
「それそれそれ、見せてよぉ、どんなんでもいいから」
「……だが、撮影品質は、良くない」
と、困った顔の白衣女子。
「いいから、見せてっ」
そうして手にした数葉の写真を覗き込む3人。
「わっ」「きゃぁ」「素敵」「……なによ、これ」
最後のセリフは最初の一人だ。名を朱音(あかね)、という。
「なによって?」と、白衣女子。名は夜和良(やわら)というが、ちっとも柔らかくない。
「--この、どの写真にもかぶってる女」
「あぁ、それ」そんなことか、と切り返す白衣女子。「同じ研究室なんだから仕方ないでしょう。だから“良くない”と言った」とニベもない。
「不要なら、処分する」相変わらず、愛想も、無い。
「ちょ、ちょっと待ってよぉ」
先ほどの女子が慌ててひったくる。
「いらない、とは言ってないでしょう? 要らないとは」
「……」
「真田先輩の写真、なんて貴重なんだからぁ。……それなりのお礼はするわ」
ふふとか朱音はもう本当に真田先輩が好きよねぇ、とかいろいろ回りは盛り上がる。
「そ、そんなことっ」
開き直るようでも赤くなるところは、スレてないというのか、それくらいは本気なのか。
「お礼など、いらないが」
と白衣女子の平坦なトーンが盛り下げる。
「……わが研究室に迷惑をかけたり」
え? とか、きょと?と彼女を見上げる他の女子たち。
「ひいては、真田室長のお邪魔をしたりしたら」
と、ここで声音は一気にマイナス30度くらいに冷え冷えとした。
「承知、しません」
思わず、ぴきぴきと固まってしまった残り女子たちである。うんうん、と頷くばかり。
夜和原が去った教室の隅。
ここは、防衛軍訓練校附属大学である。ミーハーな女子たち、といっても一応、それなりの意思とおつむのある人々の集まりである。
そして先ほどの白衣女子は、教養部の時の同級生。現在は、技術コースに進み、希望通りの研究室へ進んだ才媛。ちょっと情緒不足なのが玉にきずのクールビューティだ。その研究室の現在の室長が、学生のくせに“天才”の呼び声高く、一つ部屋を与えられている真田志郎--目下の朱音の想い人なのである。
朱音だけではない。
同級生たちにも実は真田は人気がある。--眉毛はないし、怖い顔に見えないこともないし……ではあるが、こっそりお茶目なところや、男同士で談笑しているところなどを知っている。それに、やはり才能のある男というのはこの時代、人気があるのは仕方ないといえよう。戦時下なのだから。そして、その真田の“人間的魅力”を発揮させている“原因”になっているのが、彼の親友――古代守、その人である。
古代は華やかなイイ男だった。彼が歩けば耳目を集める--だけでなく、彼といる時にふと見せてしまう真田の人間味が「いいのよ~」ということになるらしい。マニアっくな好みだが、そこまで想い入れている人は少ないまでも、理系の女子には圧倒的に人気があった。ともかく、「憧れの真田先輩」なのである。
先ほどの写真を囲んで3人の女子たちが騒いでいる。
「この女ね」「大槻っていうらしい。まだガキよ」
「うんうん、天才少女っていわれてて真田先輩が可愛がってるんでしょ」
「……まぁ、子どもなんだし仕方ないんじゃないの」
「お、余裕じゃなーい? 朱音」
「まぁね。そんなことにこだわって、嫌われても仕方ないじゃない? なんといってもまずは真田先輩をこっちに向かせなきゃ」
「そうよねー、素敵よねー」
「あら、貴女私のライバルになる気?」
「そんなこと言ってないわ。応援してるわよ。私は古代くんの方がいいなぁ」
「あ、私も私も」……。
ガードが固くてなかなか写真が手に入らなかったが、これで今夜からこれを枕に眠れる、と朱音は思った。
大槻のところなんか切り取ってしまえばいい。
……しかしこれはまた、いかにも「隠し撮りしました」って写真ね、とくすりとする。
ありがと、夜和原、と心の中で、(一応)感謝する朱音である。
★ 一方、研究室に戻ってきた夜和原。
サーッっと雨の降るような音が静かな研究室に響いている時は、研究生たちがPCに向かってデータや書類の文章を打ち込んでいたり、検索をしている時だ。紙の資料に囲まれて調べものをしていることも多いが、ともかくあまり物音を立てる者もいない。
背の高い夜和原は白衣が似合う。
柱にもたれて自分のカップに白湯を継ぐと、ふぅ、とため息を吐いた。
(大槻、ねぇ……)
常駐しているというわけではない。だが真田の助手のようなことをしていることも確か。彼女はふっとポケットから写真をこっそり出して、手のひらに乗せる。
先ほど友人たちに渡したものとは別の1葉・・・そこには、横顔ではなく、正面を向いて、微笑んだ真田の姿がある。
(・・・)
彼女もまた、真田に惚れているのだろうか?
さてどうなのであろう。彼女自身、よくわからなかったのだ。
真田が微笑みを向けていたのは一瞬。何枚かを連射したのだが、彼はとても勘が鋭い。気づかれたかもしれないが見逃してくれた。
笑顔を向けていた相手は大槻だ。慈愛--というような感じ? それでも普段は無表情な真田は、めったにそんな顔を見せることがない。その貴重な1枚は彼女たちの手には渡らなかったのである。
「杉原くん」
「は、はい」
夜和原は慌ててカップを置くと、写真をまだ手にしたまま柱の陰から顔を伸ばした。
「この先、頼めるかな」
基礎理論のあとの計算を受け持てというのだろう。わかりましたと頷いて、フリーデスクに座り、真田のフォルダを展開する。夜和原も無口な方だ。
今までのことは忘れたように、彼女は入力に没頭していった。
真田が去ったあと、彼女のデスクの上には、先ほどの写真が裏返して置かれたままである。――西暦2192年。地球は、危機の中にまだ希望を見出していない。
【End】2014.7.05
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大槻…あの大槻でしょうか?
拝読させて頂きました。
1葉の写真の使い方が素敵です!
朱音も好きですが、夜和原が凛としていて気に入りました。
真田先輩の魅力は無口なクールさの中に一瞬見せる微笑と個人的には思いますが、確かに女性に対してその微笑みを見せることは少ないですね。
2199ヤマトでそんなシーンあったかな?
でも、だからこそ、その一瞬を《写真》にできたら、そんなほのかな想いを乙女たちは七夕の日に夜和原に託したのでしょうね…♪
夜和原もそんなライバル(!?)の気持ちを察しながらも、1葉の写真は自身のもとに…
きっと彼女も真田先輩にほのかな想いを抱いていると直感しますが、それよりも大槻…というか、大槻と夜和原の研究室でのコンタクトシーンがとても気になります。
いつか続きが読めますか…
ありがとうございました。