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Original 新月world

2014-07.18 04 【羅針盤】

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isseno・04 【羅針盤】 2014-7.18

 ◆「イカルス神話」:別編
    ※ 『ヤマトよ永遠(とわ)に』pre物語(新月world)
     (「イカルス神話」本編は完結していません。近日追補予定)

【羅針盤】

 西暦2201年。
 地球の影響圏を無限軌道のように周遊する小惑星・イカルス。
 そこには擬装された戦艦と、隠されるように作られた基地があり、スタッフと優秀な士官たち、科学者たち、そして士官の卵たちがいた。そして、それらすべての人たちの“姫”も--。

 「だぁめ! 今度はサーシャの番よ!! もう、ぐっち兄ちゃん、次まで待ってっ!」
シミュレーションルームの端と端。訓練生たちが順番に装備を着け、待機するところへ、金の髪がなびいた。
 こちら側でコントロールを制御していた加藤四郎は、それを見るとあわててバイザーを上げ、明かりを回す。
「「真田くん! 君、何をやってるっ! ここへ来るのはまだ早い。教官の許可はもらったのか!?」」
 その声は、いつも優しい「しろ兄ちゃん」の声ではない。
コスモタイガー隊の、若年ながら隊長候補でリーダーである、加藤の声音だった。
 サーシャは体をこわばらせながらも、いやいやをするように首を振った。
「もう、点数はクリアしたわ。私だって、もう次の段階に行っていいはずよ!」
 溝田や山口のように優秀な者は別として、何人かの訓練生よりも良い成績をたたき出すようになっていたサーシャである。生まれつき機械への適性があるのか、素の体術はあまり得意ではないようだが(だが身が軽く、それは他の男性陣を軽く凌駕した)、機械を持たせると強い。
「お願い、撃ち合いさせて……ください」
 真剣な目に射抜かれて、カタンとスイッチを下すと、「他の者、続けて」と言い、部屋の外へ出ていった四郎である。そしてシミュレーションルームの、サーシャが立っていたレーンへ向かう。

 「真田くん。ちょっとこちらへ来て」
加藤四郎が現れて、サーシャはあきらめて、その場所を山口に譲った。
不満そうな顔をしたまま、腕をとられ、外へ引っ張られていく。
 通路に出たところで、左右に人の姿がないのを見てから、四郎は言った。
「澪。なんであぁいうことするんだ。まだ真田教官の許可はもらっていないんだろう?」
「……」
押し黙り、がんこな表情で前を見たままのサーシャ。その秀麗な横顔は、整いすぎて冷たい感じを与えるくらいだ。笑えば金の髪に黄金のほほえみだったが、最近は、時々、こういう顔もするようになった。主に、こうして訓練にかかわることで。
 「真田くん--サーシャ!」
四郎の怒った声に、顔を上げたサーシャの瞳には水が溜まっていた。だが、泣くまいとしているのか、それは溢れることはなく、きっとまなじりを上げたままで加藤を見据えている。
 強い目の、光。
 四郎は思う。
(--さすがに、生まれの違い、というのか……)
気高い、と思ってしまった。

 だが、サーシャに銃を持たせることそのものにあまり良い顔をしなかった真田である。そもそも、いくら義理とはいえいたいけな愛娘に銃を持たせたいと思う親がいるわけもなし、ましてや戦いの中、その中で辛い思いをしてきた彼だからこそ、サーシャにはその渦中に飛び込んでほしくない、なるべくなら遠ざけておきたいと考えているのは四郎にもよくわかった。
 ましてや、生まれた時から、様々なものを背負った、“運命の娘(こ)”--。

 自分を守れる必要もあるわ、というサーシャの自己申告と、強い意志で、戦闘訓練を開始したのは数週間前。体練は幼いころから、遊びがてらやってきたので、基礎力は抜群、運動神経もよく、また前述した機械への親和性も示して、あっという間に、彼女の能力は開花した。
 それもまた真田の心配事の一つ。
「よく見ててやってくれ--」
真剣に頼まれている四郎なのである。

 「あのね、真田くん。……あの対人シミュレーションは、次の次の段階の訓練なの。君は確かに、シミュレーションの点数は、あの訓練を受けるレベルをクリアしているけれど、そのあとの心理チェックとシミュレーションを受けてないだろ? 真田教官が許可を出さないと受けられないんだよ」と四郎は言う。
 「大丈夫よ--」
「そういう問題じゃ、ない」
このままではいくら言っても押し問答だ。それに、四郎はサーシャに弱い。子どもの頃から、かわいがり、甘やかしてきたのだ。いくら戦闘訓練に入ったからといって、急に厳しい顔をしても、相手がどこまで納得してくれるかは疑問だった。
 (普通の女子訓練生と同じと思えというわけにはいかないよ)
四郎もまだ若い。悩めるオトシゴロなのである。


 「澪」「あ、お義父(とう)様!」
誰かが連絡したのかもしれない。真田が現れ、「こっちへ」とサーシャを呼んだ。
事情は聞いた。加藤、ありがとうな、と優しい目をしてくれたので、四郎はほっとし、その重荷を人が引き受けてくれたことに感謝した。

 対人シミュレーションは実際、きつい。
現在のコスモガンは、一瞬のうちに相手が蒸発してしまうものを使っている場合もあるが、高エネルギーが十分でない現在、相手がひどい状態になる。あたっても一発で死んでしまわないメリットもあるが、より悲惨な場合もあり、それらを冷静に処理できて初めて、真の戦闘員といえる。
 精神の錯乱を避けるためには、どこか麻痺して冷静になる必要もあったが、四郎は、サーシャをそういう感覚に慣れさせたくなかった。
その時が来たら、(どうしたらいいのだろう)という迷いもある。
 自分たちに守らせてくれるお姫様でいてくれた方が、どれだけ楽かと思うのだ。

 「お義父さま、私、次の段階に行ってもよいでしょう?」
少し甘えた口調はあるものの、真剣な目をして、サーシャは真田を見上げた。
真田はといえば、少し困った顔をし、だが表情は変わらないまま、サーシャを見返す。
その肩越しに四郎と一瞬、目が合った。
 (教官、助けてください)
その想いが通じたのかどうか、真田はサーシャの肩に手を置いた。
「澪。こちらへおいで……」「はい」
 頑強に言い張っていた、硬いオーラがふわりと柔らか味を帯び、するりと四郎の前を通り過ぎて真田についていく。ふわりと風が吹いたようで、四郎はその存在をつかみそこなった。
(あ……)
なんとはなしの、喪失感。
 (俺は--どうすれば、よかったのだろう?)
融通が利かなすぎる、という自覚はある。
 だが、融通など、利かせていては、命がいくらあっても足りないのもまた、こんな立場だ。

 「加藤訓練生、訓練に戻ります」
敬礼してそう申告すると、あぁと真田は軽くうなずき、精進しろよと言った。だが今は。
「一緒に、おいで。加藤も」


 「澪--今日はここから宇宙(ほし)が見えるよ」
「わぁ!」
 エレベータで上がった広い部屋は、サーシャがこれまで一度しか来たことのない部屋だった。
ふだん過ごしている場所から比べれば少し広いような気がするが、それは、片面ではなく左右に、ほぼ楕円形に部屋が展開している所為だろう。
 真田が一つのデスクの前でいくつかのパネルを操作すると、天井近くのスクリーンには大きな星空が投影された。恒星の無い、闇色の宇宙(そら)。雑多な浮遊物が数多く浮かんでいるような場所だったが、どこまでも広がっていくような気がして、サーシャは声を上げた。
 壁には多くの機械が埋め込まれており、そのうちのいくつかはグリーンの光がかすかに点っていた。うぃ~ん、と微かに唸りの音がする。

 四郎たちが暮らしている矮星(ほし)は、すべてがドームに覆われていたが、かすかな穴から覗く潜望鏡で宇宙(そと)を見ることができ、それを疑似的にスクリーンに映し出せた。場所は限られており、2か所だけ。その最も大きなものがこの部屋にある--後の宇宙戦艦ヤマト・第一艦橋である。

 部屋の中央に不思議な計器があり、サーシャはそれに惹かれた。

 「これは?」
「--コスモレーダーと、次元羅針盤」
真田が静かに言う。
「らしん、ばん?」サーシャが聞き返した。
「あぁ。……行く先を導く、水先案内人が使う」
「--水先、案内人?」
「そうだ。澪--君の使命だ」
「わ、私!?」
 艦橋の入り口に静かに立って、それなりの感慨にふけっていた加藤四郎にもその言葉は驚きだった。
(サーシャが……澪ちゃんが、これを?)
「そうだ。君は羅針盤を操り、この艦(ふね)の水先案内人として、人々を導かなければならない」
「導くって--どこへ」
 それは、まだわからない。
 真田はそれだけを言うと、つかつかとその羅針盤--コスモレーダーに近づいた。

 「澪--学びなさい。宇宙のこと、地球のこと。そしてこの宇宙に今、起こっていること。この艦(ふね)のこと--今、君たちはもう知っている。ここが惑星(ほし)ではないこと、隠された艦(ふね)で、いつかは旅立つことを、だ」
「真田教官!」「お義父さま!!」2人は声を揃えるようにして、真田に問いかけた。

 「澪--君は導くんだよ。私たちを--未来へ、ね」
だから。銃を持ち、人を倒すことよりも、もっと大切なことを。まずは学んでほしい、と。そう言いたかったのかもしれない。
「真田教官……」四郎の胸に、じわりとしたものが湧き上がっていた。

 未来--僕らの未来は、どこにあるんだろう?
 それを、導いてくれるのは、もしかして、サーシャ。君か?
 若い、溌剌とした、命。幼な子の頃から、皆で見守ってきた姫、君なのか!?

ともすれば絶望に転じていきそうになる気持ちを抑え、兄の後を、ヤマトの後を継いで宇宙(そら)翔ける我ら。その、女神として、君はいるのか? サーシャ。澪。……。

 四郎ははっとして目を上げた。

 「しろ兄ちゃん--サーシャと一緒に、行こう」
サーシャが近づいて、ふわりとほほ笑んでいた。
真田がその後ろに立ち、2人を見守るようにいる。
「澪ちゃん……」
「しろ兄ちゃんたちが好き。お義父様が好き。皆が好きよ、私--だから。一緒に、行こう」
 何かの予感があったのかもしれなかった。

 この日から、サーシャ=真田澪の、レーダー手としての特殊訓練が始まったのである。
地球が三度目の災厄に見舞われる日--ヤマト第三の戦いまで、もうあまり日が残されていなかった。

【End】 2014.7.10-18 Up

 
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~ Comment ~

NoTitle 

こんにちは~ポトスです。
いっせーのせ! 企画へのご参加ありがとうございます。

新月worldの真田さんは、なんか「大きい人」ですよね。
自分なりの悩みも苦しみもあるんでしょうけど、それが表に現れることはほとんどない。良きも悪しきも裡に秘めたまま、淡々と人生を歩んでいるような印象を受けます。
一研究者、一科学者という立場ではなく、全てをその手に握っているが故の孤独のようなものを感じますね。

ちなみに、真田は「澪」と呼ぶのに、サーシャは自分を「サーシャ」と余分ですね。ということは、イカルスでは日常的に彼女を「サーシャ」って呼んでいたということ?
そんな事にこだわる自分も細かいですけど^^;、澪と呼ばれるかサーシャと呼ばれるかで、呼ぶ方も呼ばれる方も意識というかアイデンティティも変わるだろうな~と思っているポトスでした。

素敵なお話をありがとうございました。^^

いらさい>企画者殿 

いつもコメントをありがとうございます。

拍手・コメント等のお返事は、新月本館でまとめさせていただきます。
皆さまも、どうぞ、お楽しみくださいませ(_ _)。
コメント&拍手はこちらでOKです。
こちらの方が、メールが届くので読みやすいのだったりして(^_^)♪

それでは、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

管理人

こ、これは…!! 

おおーーー
大好きなお話ありがとうございます♪ いやー、いい企画だしたな、わたし!(いや、片割れの端っこくらいなんですが)
ひさびさのちいさいサーシャちゃんで嬉しいんですが。これは本編の銃撃戦に向かっていくわけですよね。練習させてくれればよかったのに。。 そしたら。でも、いや。… うう。悲しい結末を思い出してしまった…
サーシャちゃんのお話、ありがとうございました!

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