FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←天泣、再生→生還・05 →天泣、再生→生還・07
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png ♪ 情報・連絡
もくじ  3kaku_s_L.png 【はじめに】
もくじ  3kaku_s_L.png KS&MY百題_新月版
もくじ  3kaku_s_L.png G2005-70 Timeout
もくじ  3kaku_s_L.png G2006:AD2200年代
もくじ  3kaku_s_L.png Yoko Sasa短編
もくじ  3kaku_s_L.png 短編:相原祐子
もくじ  3kaku_s_L.png パラレルA
もくじ  3kaku_s_L.png Original 新月world
もくじ  3kaku_s_L.png ◇ヤマト2199
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

bu2009-29 天泣(てんきゅう)

天泣、再生→生還・06

 ←天泣、再生→生還・05 →天泣、再生→生還・07
5 = 脱出 =

 「少しは回復しなさったようだな」

 白髪の医師が、与えられた碗から食事を摂っている和気を見てそう言った。
体を起こしている時間の方が長くなっていた。
翌日、まだフラフラのところを敵の兵士らしき者に格子の外へ引き出され、掛けられていた布をはがされた。
また引きずり出されるのかと体を固くしたが、背に何かを塗られたのだ。
その瞬間は、死ぬかと思うような激痛が襲い、殺されるとマジで思ったが、そのまま気絶したらしく牢に戻された。
……目覚めたらあれほどの傷みが薄くなっており、裂けた皮膚ももりあがって傷はふさがろうとしていた。

 「こ、これは、どういうことじゃ……」
そのまま一緒に放り込まれた軟膏らしき小さなパッケージを医師は調べ、どうやら特別な薬効のある薬らしいとわかった。――傷には劇的に聞く。
 開放され、そののちに捕まって生き延びた軍人たちから聞いてわかったように、傷つけては治癒させ、また拷問に引きずり出す――回復を早め効果を高めるための薬と知った時は、その残酷さにぞっとしたものだが、その時は裏があるとしても考える余裕はなく、ありがたく傷の手当てに使わせてもらった。

 そうして1日が過ぎた頃、和気はまた、あの明るい部屋へ引き出された。

 二度目の拷問まがいが成されたが、ヤマトのこと以外には答えられるだけ答えた。
 とはいえ現在の和気が知っていることは多くはなく、相手がたがそれで納得するはずもない。
傷は癒えていたとはいえ、朦朧とした中での暴行は応えたが、あとで考えるとそれは古典的ともいえる方法であり、残酷でも悪逆非道でもなかった部類に入る。鞭と電気的刺激と接触。それ自体は心底ぞっとするものだったが、繰り返される半日の間に、和気は、慣れた。

 口も利けない状態になって放り込まれたのが元の牢だったことは幸いだったろう。意識を失っていた間に自分が何をされたのか、和気は知らない。
 今回は、戻される前に同様な薬が与えられ、傷はふさがった状態だったが、消耗は覆うべくもなかった。

 その牢で二度目に目覚めた時、和気は自分が生きていたことが不思議だった。

 傷つけられていたのは和気と、もう1人――もう少し若い少年だけだった。
幼さの残る様子ながら態度その他はふてぶてしく大人を装う処がある。
武道をやっていたと言い、聞いてみれば訓練学校に入学が決まっている……予備役か。
年齢は13歳、よく殺されなかったものだと、その意思の強そうな、きかん気の目を見た。
 少年は和気ほどには痛めつけられていなかったこともあり、その回復も早く、2人が元気になると怪我人はいなくなった。

 部屋には7名――その少年・大樹、医師である内村佐竹とその妻・香織、オペレーターだったというメガネの女性・下倉美貴、物静かな男・二見、そして和気である。

 痛みで眠れなかった夜に、和気は考えたのだ。
 人々は忘れてはいない。地球の経てきた辛い戦いと、自分もその一部であったヤマトという艦(ふね)を。そのあとの復興に浮かれた地球に、さらに残酷な鉄槌が穿たれたことを。
 そうまでして生き延びた地球だ――俺は、生きてやる。
 こんなところで、あいつらに再会もしないまま、死んでたまるものか。

 たとえ何がどうなろうと。
古代は、島は。真田さんは。南部や相原や太田は。何とかするに違いないのだ。
だから俺は、生き抜いてやる――このひとたちと一緒に、だ。

 だが、逃げ出す勝機も、情報も得られないままに、さらに数日が過ぎた。

☆ ☆

(どうやって全員を逃がす?)

 士官でもなんでもなかった和気には、人を守るノウハウはあまりない。
ただ会社役員として自分の身内を率いてきた経験が役に立つのかもしれなかった。
いずれにせよ、彼らを見捨てて自分だけ逃げる気は毛頭なかった和気である。
――仮病か? せめて爆薬の一つでもあれば。
ひとつだけわかっていたことがある。……長期的な計画を立てられる場合を別として、時が経てば経つほど、脱出は難しくなるということだ。

 好機は案外早くやってきた。
注意深く観察すること――兵士たちの動き。そして自分たちの捉えられている場所の情報。

 下倉美貴は司書だったそうで、こうした実働には向かないと思っていたが、細かいことに目が行く所為か、洞穴の奥の方が警報装置もついていなければ警戒もされていないことを探り出した。
二見はぶつぶつ言いながら、逃げる計画にあまり賛成しなかった――再度捕まったらもっと酷い目に遭うから、というのだし、佐竹もその考えに近かったようだ。しかし佐竹香織が、
「子どもたちが気になる。いつまでもここでぐずぐずしているのなんか耐えられないわ」
と言ったのでキマリだった。
子どもたち、といってもすでに独立して久しく、うち1人は軍に奉職しているのだと言い、抜け出したからといって何ができるわけでもないのだが、いざとなったら女の方が強いのかもと思う和気である。

 いつの間にか、リーダーの立場に据えられていた感のある和気と内村医師は、天然の山らしき処を利用したこの施設が、敵の居住場所があるわけでもなければさして手を入れた様子もないことを利用するしかないと考えた。
警戒網は張られているだろうが、案外、捕虜に固執している様子も見えない。食事以外は放っておかれ、だが水と食事が抜かれたり放っておかれることはない、ということからまったく監視がされていないというのは期待薄だろうということでは意見が一致した。
 実行するなら、昼だろう――食事の配給が終わって少し立ったあと。
衛兵の交代が行なわれる。監視カメラの位置は調べた……その点は、和気と、水道の技術屋だという二見が調べたのである。
「われわれと同じ組成の宇宙人なら、どこかから水を引いているはずだ」
二見の言うそれが、外へのルートを辿るきっかけになった。

☆  ☆

 そうして、逃避行が始まった。
 金属物はすべて没収されてしまったと思っていたが、医師の隠し持っていた器具と、美貴のメガネを使わせてもらった。
「私、これないと本当に何にも見えないのよね。誰かに捕まってないと転ぶかも」
そう言って和気にくっつくのを、
「お姉さん、やめなよ。ミエミエ」と大樹に言われ、
「もうっ。かわいくないわね、この子は」と睨み返される。
 大樹は愛想のない子どもで、和気にしか心を開かなかったため――しかも、自分より強い者はわかる――そういう慕い方だったし、だから言うことをきく、今だけはね、という意思表示があからさまだった。
 全員、運命共同体だ。
 それをまずわかってもらなければそれが生死を分けるのだから、と和気は似合わぬ訓示などせざるを得なかった。
(事情はわからんが、軍人予備軍には結構、そういうのがいるな……)
もしかしたら戦災孤児かもしれない。
何らかの理由で心が頑ななのだ。……古代進をふと、思い返した。
だがあいつは大きな男だったからな、最初はえらく青くて突っ走ったヤツだと思ったが。
 その古代は、自分たちを含めた地球を助けるために、死力を尽くしている。
それだけは、疑うべくもなく、和気の胸の中にある確信だった。

★  ★

 そうして、あっさりと見つかることもなく、彼らはそこを抜け出した。

 鍵を開けるのはさほど難しくなく、本来なら他の牢の者たちも助けたかったのだが、目をつぶる、と最初から決めていた。
それについてはチーム内で論争もあった。
全員で蜂起した方が効果的だ、と佐竹が言ったのだ。
――案外だなと和気は思ったが、そうなれば本当にイチかバチかで、失態を怖れて本隊でも出てきた日には、その機会(チャンス)は永久に失われてしまう。
 ここは、目をつぶろう。
自分たちがまず逃げて――そうして、俺にアテがあるから。和気は心の中で、友納に連絡を取り、防衛軍に助けてもらおうと思っていた。
彼らは戦い、生き残っていると、信じて。

 そろりと抜け出した牢からは、他の部屋に見つからないことも肝心だった。
騒ぎが大きくなれば、見つかる可能性が出る。
戦うことは不可能だったから、ただひたすら隠密に行動するしかないのだ。
――どこかで、銃を。
その望みは切実で、そのためにどうしても1人は敵をやっつけなければならなかったが、それもリスクを伴う。

 結局、交代したばかりの見張りを倒した。
大樹に、足に飛び就いて両足を掴み、転ばせるようにと指示を出して、同時に飛びかかった。
和気は声や音を出せないように頭を押さえ込む必要があったのだ。
そのあまりの素早さと息の合い具合に、他のメンバーが驚いたほどだ。
――一発くらいなら、なんとでもなる。ともかく、急がなくては。
 そうして格子にくくりつけてきた兵士に誰かが気づけば、そこからの逃亡は厳しいことになるのだ。
少しでも発見を遅らせる必要があった。

(続く)
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png ♪ 情報・連絡
もくじ  3kaku_s_L.png 【はじめに】
もくじ  3kaku_s_L.png KS&MY百題_新月版
もくじ  3kaku_s_L.png G2005-70 Timeout
もくじ  3kaku_s_L.png G2006:AD2200年代
もくじ  3kaku_s_L.png Yoko Sasa短編
もくじ  3kaku_s_L.png 短編:相原祐子
もくじ  3kaku_s_L.png パラレルA
もくじ  3kaku_s_L.png Original 新月world
もくじ  3kaku_s_L.png ◇ヤマト2199
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

【天泣、再生→生還・05】へ  【天泣、再生→生還・07】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。