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Original 新月world

「second love」02

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2.
【Second love】――:お題2006 No.51 「砂浜」

・・・・・・・・・・

 古代聖樹が歓楽街に出入りしているのは、べつにヤバい店に出入りしているとか、女と遊んでいるとか、そういうことではなかった。
訓練学校は全寮制だ。1度抜け出すと夜中に忍び込むのは難しいし、出てしまえば帰らない。
ネオンと猥雑な空気の中に、ただ、所在なげに身を置き、時間をツブす。
似たような若者たちや、一夜の快楽を求める人々。そして労働者たち、夜の男たちやオンナたちが集まってくる場所――なんとなく。
そのハミ出たような、誰で“なくとも”居られる場所が心地よくて時には路上で夜明かしすることすらあった。

 寒くなり始めた季節だ――路地の石段に座り込んで、パンをかじっていると、裏口の戸が開いて、背の高い、スタイルは良いがケバい化粧をした女が顔をのぞかせた。
外のダストシュートにゴミを放り込むと
「そんなところにいると、邪魔よ、あんた――猫が怖がるからね」
タルいなと思いながら顔あげて、
「ごめんよ姐(ねぇ)さん」と言う。「チャイナドレス、よく似合うね」ふと口から出た。
 不機嫌そうな顔をしていたその女は、ふと表情を緩めると。
「何も出ないよ」
と口だけは蓮っ葉に言うが、明らかに機嫌は良くなった。
「……あんた最近、この辺でよく見かける子ね。よく見るとカワイイじゃない」
古代聖樹は整った目鼻立ちをしていたし、むしろ男っぽいというよりは少年らしいアイドル系だ。
父の進もそうだったらしいが、どこか女性の心持をくすぐるところがあり、特に年上には絶大にモテた。
「行くとこないんだ――朝までいさせてよ」
そんなつもりはないのだろうが、甘えるのも上手だ。あまり期待はしてない……そんな投げやりさが逆に気持ちに引っかかったのか、くい、と首をもたげると「こっち、来な」ドアに手を添えている下から、彼は部屋の内側に滑り込んだ。

 あたりは雑然としていた。調理場か…物置か。それにしても、あまりきれいじゃなかった。
でも、いいや。
寒いから――隅に置いてもらえば。腹も膨れたし、眠いし。
だからといってあそこに帰るのも――制裁の鉄拳2、3発では済まないだろう。

 「あんた、タワー*の子ね」
出された壊れかけた椅子に無言で座っていた聖樹は、立ち上がると、また扉を開けて出て行こうとした。
「待ちなって――」
手を引かれて勢いを余って椅子に倒れ込む。
「慌てるんじゃないよ――何も通報してやる義務なんかありゃしないんだから」
ややこしいことはご免だよ、と言った。しゅんしゅんと湧き始めたヤカンからお湯をカップに注ぎ、はいよと出してくれる。「飲みな」
こくりと頷いて手をそのカップに伸ばす。スープの良いにおいがした。
「出来合いだけどさ――あったまるよ」女が少し笑った。
 制服の上着は隠してきていたが、シャツについた襟章までは外すのを忘れていた。
だがそれをなくしてしまうと始末書では済まないため、上着の内側に隠してつけたまま、なのである。
ICチップが組み込まれており、その気になれば、追跡することも可能――だが聖樹は、その育ちから生体認証システムを体に埋め込まれているため、認証チップが一つくらい増えたからといってどうというのだろう。
訓練学校を卒業し、軍人として一人前になったら外そう――自分で自分が守れるだろうから。
あのいまいましいくそ親父がそう言った。
今さらICチップや追尾システムを排除しても意味なし、そう思ってそのまま放置してある。
掌の上――そう思ってしまうのは愉快なことではなかったが、そのことについても、もはや15年。諦めもつこうというものだ。
 聖樹は少し拗ねた目を上げた。
鋭いね。放っておいてくれないか――自分から転がり込んだくせに、と言うのは少年特有の生意気さ。
「まぁ面倒なのはご免だけどね――そんなこと、気にするヤツぁこのあたりには居やしないさ。世の中、平和だし。景気は相変わらずだしね」
両手を広げてみせて、その女のむき出しの腕にかかったストールが、あまり品の良くない色だというのに聖樹は気づいた。――が、ふいと下を向くと、椅子に足を乗せてまたスープをすする。

 「だんまりかい…」
「別に。話したいことがないだけ」
ぽつん、と答えた聖樹の暗い瞳を見て、女は一瞬笑ったが、ふいと背を向けてタバコに手を伸ばす。
「――この部屋になら居てもいいよ」
指差す方向を見ると、内側へ続く木の扉の横に、小さな木の寝台が置いてある。
「時々来るやつがいるからさ。浮浪者のガキだけど、そんなとこでよければ、毛布もあるし。鍵だけかけておいてね」
親切心があるのか、何か別の興味を惹かれたか。
 「あたしゃまだこのあともう一仕事あるからさ、好きにしてな。扉の内側に入ったら承知しないよ……腹が減ったらそこらへんのものなら食べてもいいから」
棚にはいくらかの乾物と、珍しい果物の天然ものが乗せてあった。
「あぁこれかい。お客さんにもらったんだ。――あたしが仕事が終わってもあんたがまだ居たら、一緒に食べようか」
くすりと笑いながら。
 タバコを灰皿に押し付けると、細い煙とぷんとした香が部屋に漂った。
コトン、と聖樹がテーブルに置いたカップが音を立てる。
じゃ、ね。と女は扉の向こうに消えていき――考えてみれば無用心なことだ。
見も知らぬ少年を放り出して中に入れて、盗みでも働かれたらどうするのだろうか。
聖樹はあたりを見回したが、薄暗く、たいして見るべきものはなかった。
要するに、“盗られるほどのものはない”とでもいうのだろう。

 ややもして、扉の向こうから賑やかにガチャガチャやる声が聞こえてきた。
どうやら鳴り物も入っているらしくドンチャカという騒ぎである。


 その女がひとしきりのステージ(?)と客あしらいを終えて、その外に続く小部屋に追加の食料と小物を取りに戻ると、部屋は暗く沈んでいて少年の姿は見えなかった。
(あれ? ……帰ったか。まぁでももうこんな時間だしね)
 およそ2時間くらいが経過していただろう。少しは気にならないでもなかったし、盗人ではない……彼女のその勘は外れたことがなかった。
(あたしの勘だと――もう少し居ると思ったけど)
くすりと笑って肩をすくめると、彼女は後片付けにかかった。
大事なことでない時は勘も外れることがあるのだ。

 その時、隅の方でカサリと動く音と気配がした。
「あれ!? 居たのね――」
むくりと起き上がるようにして、いままで気配を消していた? 闇の中で毛布にくるまっていた姿が動いた。
「――終わったの?」
居酒屋の明かりは暗くなっている。
女はふっと微笑むと、
「泊まりたかったら、いいよ。さっきも言ったけど、そこなら寝てても」
木の椅子に腰掛けて言う。ココア、もう1杯飲むかい? というと頷く気配がしたので、自分の分も淹れて、そこに彼女は座った。相変わらず小さくなったまま無表情に少年は座っている。
「だけど、ルールがある。……さっきも言ったけど。この部屋から出ないこと。大人しくしてること。タバコは吸わない――火が怖いからね。それと」
女は少し微笑んだ。笑うと印象が変わり、聖樹は最初、少々年配だと思ったのが自分の見間違いだったと思ったほどだ。もう少し若いのだろうか?
「――名前くらい、教えなさい。呼ぶのに面倒だからね」
「あぁ、ごめんなさい」聖樹は素直に謝った。押しかけてきて、礼儀もなにもあったものではない。……名前。通報されないまでも、ここではただの聖樹でいたかった。ただ、珍しい名だ。名乗ればいつかわかってしまうのだろう――軍学校の者だと知れたからには。
「――名前、ないと不便だよね」彼は言った。彼女は嫣然と見ているだけだ。
彼は言う。「仲間は、“セイ”って呼ぶ。フルネームとか、いらねーだろ?」
こくりと女は頷き、「私はルウマ」と言った。「これも、皆がそう呼ぶってだけさ。それでいいんだ、このあたりの街では。――IDカードがあんまり意味のない場所だ」
 セイジュは頷くと、ルウマの目を見上げて、ありがとうと言った。

[続く]
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